バイオリファイナリーとは
化石燃料の大量消費に伴い多くの環境問題が懸念されている昨今、新たな代替燃料の台頭が求められています。そこで、バイオマスを原料として燃料を始めとした様々な化学製品を製造する「バイオリファイナリー」が大きな注目を集めています。バイオマスは、可食性または非可食性という2つに大別されます。現在では、その前者であるトウモロコシやコメを原料としたバイオリファイナリーが南米などを中心に進みつつありますが、食糧との競合が懸念されます。そこで、後者である植物などを原料として用いることがより望まれています。当研究室では、独自の技術を用い、非可食性バイオマス、特にセルロース系バイオマスを用いたバイオリファイナリー社会を実現すべく、研究を行っています。
酵素法によるセルロースの高効率加水分解に向けて
セルロースは結晶性の多糖であり、これを加水分解することでエネルギー源となるグルコース (単糖) が得られます (糖化)。当研究室では、セルロースを分解することの出来る酵素 (セルラーゼ) に注目し、研究を行っています。しかしながら、植物において、セルロースはヘミセルロースやリグニンに取り囲まれており、そのままでは酵素がセルロースに接近できず、加水分解することはできません。そこで、様々なイオン液体を用いることで、酵素糖化に適したセルロース系バイオマスの前処理プロセスを開発しました。また、セルラーゼ同士、あるいはセルラーゼとヘミセルラーゼなど、協同的に働く酵素の組み合わせ群を探し出し、セルロース系バイオマスの高効率な酵素糖化を目指しています。
Uju, Y. Shoda, A. Nakamoto, M. Goto, W. Tokuhara, Y. Noritake, S. Katahira, N. Ishida, K. Nakashima, C. Ogino, N. Kamiya, Bioresour. Technol., 103, 446-452 (2012)
Uju, K. Abe, N. Uemura, T. Oshima, M. Goto, N. Kamiya, Bioresour. Technol., 138, 87-94 (2013)
Uju, A. Nakamoto, Y. Shoda, M. Goto, W. Tokuhara, Y. Noritake, S. Katahira, N. Ishida, C. Ogino, N. Kamiya, Bioresour.Technol., 135, 103-108(2013)
Uju, A. T. Wijayanta, M. Goto, N. Kamiya, Biomass Bioenergy, 81, 63-69 (2015)
L. Jia, G.A.L. Goncalves, Y. Takasugi, Y. Mori, S. Noda, T. Tanaka, H. Ichinose, N. Kamiya, Bioresour. Technol., 185, 158-164 (2015)
G.A.L. Goncalves, Y. Takasugi, L. Jia, Y. Mori, S. Noda, T. Tanaka, H. Ichinose, N. Kamiya, Enz. Microbial. Technol., 72, 16-24 (2015)
セルロソーム
近年では、天然細菌が自身の近傍へ分泌して植物の分解等に利用している、「セルロソーム」というタンパク質複合体に注目が集まっています。セルロソームは様々な酵素を集合化し、協同的に作用させることで、セルロースやヘミセルロース等の多糖から成る植物を効率的に分解していると考えられています。当研究室では、このセルロソームを様々なアプローチで模倣し、非可食性バイオマスを効率的に分解することができる新規材料を開発しています。
DNAを足場とした人工セルロソーム
デザイン性に優れたDNAを足場とし、そこに酵素を集積することで人工セルロソームを構築しました。その結果、酵素を単体で作用させた場合と比較して、最大で5.7倍の効率化に成功しました。現在、様々な足場を用いた人工セルロソームの開発に挑戦しています。
Y. Mori, S. Ozasa, M. Kitaoka, S. Noda, T. Tanaka, H. Ichinose, N. Kamiya, Chem. Commun., 49, 6971-6973 (2013)