次世代経皮吸収センター長
後藤雅宏
次世代経皮吸収(TDDS)センターは、九州大学総長のリーダーシップの下で重点的に推進する新たな戦略的研究拠点の一つとして、平成24年4月に発足したセンターです。
現在、注射に代わる低侵襲性の薬物投与技術の開発が望まれています。なかでも、塗ったり、貼ったりする経皮吸収技術は、患者の痛みを伴わない次世代型の薬物投与法として注目されています。ところが一方で、人は、外的から身を守るために全体が皮膚で覆われており、特に皮膚の最も外側に位置する角層は、大きな防御機能を有しています。このため、薬物を皮膚から高効率に吸収させるためには、特別な技術が必要となります。我々はこのような目的で、薬物を油状基剤にナノ分散化する特殊なナノコーティング技術Solid-in-Oil(S/O)技術を開発しました。
そこで、本センターでは、このS/O技術を利用し、現在、経皮吸収法の主流となっているマイクロニードルに代わる新たな低侵襲性の経皮吸収投与法を開発するとともに、次世代型の経皮ワクチン等の開発を行います。このために、界面化学や材料化学、生物工学などの広範囲な学問を融合して研究を推進し、国際的な先端研究センターを構築します。本センターは、ナノテクノロジーやバイオテクノロジーをキーワードとする基礎研究の推進と、得られた新規創薬化合物をいち早く実用化・産業化へと結びつけるためのトランスレーショナル研究を重点的に推進して参ります。
特に、本TDDSセンターの「産学連携」部分に関しては、伊都キャンパス隣接地に建設された福岡市産学連携交流センター(FiaS)に居を構え、産学連携活動をさらに積極的に推進して参ります。お陰さまで、すでに、本S/O技術を利用した8品目の化粧品「VIVCO」が上市され、年間の売上高が4億円を超えるまでに成長しました。今後は、これまで得られた数々の優れた研究成果を有効に活用し、創薬分野への展開を諮ります。本センターのさらなる発展のために、なにとぞよろしくご指導ご鞭撻の程、お願い申し上げます。